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自由気ままに、驚くほど不定期更新中。

第壱章 【前】

 

コン、コン・・・

深い夜の闇に呑まれた城の裏口に
規則正しいノックが刻まれる。

「はっ・・・・・!」

コン、コン・・・

「なッ・・・・・!?」
この城の主は、人気の無いこの場所に
初めての来客が来たことに戸惑った。

しかも、こんな夜更けに。

コン、コン・・・

恐怖と好奇心が襲ってくる。

この城の主・・・花城憂雅は重い身体を起こした。
そして、隣で眠る弟を代わりに行かそうかと思ったが、
寝顔を見て、申し訳なくなり1人で行くことにした。

コン、コン・・・

大きな窓から差し込む星明かりは
淡く、消えてしまいそうな光を放っている。

流石に、訪ねてくれたお客様を
待たせる訳にはいかないと早足になる。
憂雅は時々転びそうになりながら、音のする裏口へ
急いだ。

すると、暗く先の見えない廊下の奥から
僅かに外のにおいがした。
これは、外に広がる花達の甘い蜜の香りだ。

コン、コン・・・

ノックの音が、徐々に大きくなる。

「はい・・・もう少し待ってください・・・!」

肩で息をしながら、裏口へ手を伸ばす。
と、その前に壁に掛かる鍵をとり、もたつきながら鍵穴に鍵を刺す。
しばらくするとがちゃっ、と鍵の開く音がして
憂雅は安堵の表情を見せた。

風に圧されなかなか開かない扉を
力一杯押すと、ぶわぁ・・・と風が憂雅の髪を乱す。
やっとの事で開けると外は暗く、何も見えなかった。

「あの・・・?誰か居ます・・・よね?」

憂雅の声は闇に融けて消えた。
そして相手にも自分の姿が見えないと気付き、
憂雅はふぅ・・・と息を吐いて、暗闇に語りかけた。

「今、手元に明かりがないの。
だから、今から私が造りだすんだけど・・・
驚かせたらごめんさい・・・成功する自信は無いけど・・・」

そう言うと憂雅は手のひらをぎゅっと強く握り締めた。
そして意識を手に集中させると・・・

『ぼわぁっ』

と、憂雅の握られた指の隙間から赤い光が漏れた。
ゆっくりその手を開くと、そこには
白い炎が小さいながらもゆらゆらと灯っていた。

「んー・・・やっぱり久しぶりだから頼りないな・・・」

*

一旦、ここで切ります(><;
長くてすみません<m(_ _)m>